2009年 11月 02日
薬師如来の十二の大願 |
『薬師瑠璃光如来本願功徳経』には、
薬師如来が菩薩の道を修行しておられたとき、
菩提を得たときには、
諸々の有情の求めるところは皆、それを得ることができるように、
と十二の大願をたてられたことが語られています。
第一の大願は、願わくは我れ来世に、阿耨多羅三藐三菩提を得ん時、
自身の光明熾然(しねん)として、無量無数無辺の世界を照曜(しょうよう)し、
三十二大丈夫の相(すがた)・八十随好(ずいごう)を以て、其の身を荘厳し、
一切の有情をして、我の如く異なること無からしめん。
第二の大願は、願わくは我れ、来世に菩提を得ん時、
身は瑠璃の如く内外に明徹、浄くして瑕穢(げえ)無く、
光明廣大にして功徳は巍巍(ぎぎ)たり。
身は善く安住して、焰綱(えんもう)の荘厳なること日月(にちげつ)よりも過ぎ、
幽冥の衆生は悉く開暁(かいぎょう)を蒙り、
意の趣く所に随って、 諸(もろもろ)の事業(じごう)を作(な)さん。
第三の大願は、願わくは我れ、来世に菩提を得ん時、
無量無辺の智慧と方便とを以て、
諸の有情をして皆盡くること無き所の受用の物を得せしめ、
衆生をして乏少(ぼうしょう)する所有らしめること莫からん。
第四の大願は、願わくは我れ、来世に菩提を得ん時、
若し諸の有情、邪道を行ずる者をば、
悉く菩提道の中に安住せしめ、
若し声聞・独覚乗を行ずる者をば、皆大乗を以て之を安立せん。
第五の大願は、願わくは我れ、来世に菩提を得ん時、
若し無量無辺の有情有って、我が法の中に於て梵行を修行せば、
一切皆、戒を缺(か)かず、三聚戒(さんじゅかい)を具することを得しめ、
設い(たとい)毀犯(きぼん)有りとも、我が名を聞きおわらば、
還って清浄を得、悪趣に堕ちざらん。
第六の大願は、願わくは我れ、来世に菩提を得ん時、
若し諸の有情、其の身天性にして、諸根具わらず、
醜陋(しゅうろう)・頑愚・眼・耳・口・手・足等不自由にて又、
不治・難病の種種の病苦ありとも、
我が名を聞きおわらば、一切は皆端正かつ、慧なることを得、
諸根は完具して諸の疾い(やまい)の苦は無からん。
第七の大願は、願わくは我れ、来世に菩提を得ん時、
若し諸の有情、衆病に逼切(ひっせつ)して救い無く、帰すること無く、
醫(い)無く、薬(やく)無く、親無く、家無く、貧窮(びんぐう)にして苦多からんに、
我が名號のひとたび其の耳に経ぬれば、
衆病は悉く除き、身心安楽にして、家族資具、悉く皆豊かに足り、
乃至無上菩提を證得せん。
第八の大願は、願わくは我れ、来世に菩提を得ん時、
若し女人有りて、女の百悪に逼悩(ひつのう)せらるるが為に、
極めて厭離を生じ、女の身を捨てんと願いて、
我が名を聞きおわらば、
一切皆女を転じて男と成り、丈夫の相を具う(そなう)ことを得ん、
乃至無上菩提を證得せん。
第九の大願は、願わくは我れ、来世に菩提を得ん時、
諸の有情をして魔の羂網(けんもう)を出(いだ)し、
一切の外道の纒縛(てんばく)を解脱せしめん。
若し種種の悪見の稠林(ちゅうりん)に堕ちたるものは、
皆當に引攝(いんじょう)して正見に置き、
漸く諸の菩薩の行を修習せしめ、
速かに無上正等菩提を證せしめん。
第十の大願は、願わくは我れ、来世に菩提を得ん時、
若し諸の有情、王法に加せられ、
縛錄(ばくろく)・鞭撻・牢獄に繋閉(けいへい)せられ、或は刑戮(ぎょうりく)に當り
及び餘の無量の災難に凌辱(りょうにん)せられ悲愁煎迫して、身心に苦を受けんも、
若し我が名を聞かば、
我が福徳威神力(いじんりき)を以ての故に、
皆一切の憂苦(うく)より解脱することを得ん。
第十一の大願は、願わくは我れ、来世に菩提を得ん時、
若し諸の有情の飢渇(きかつ)に悩まされ、
食を求めんが為の故に諸の悪業を造(な)すも、
我が名を聞くことを得、専念に受持せば、
我れ當に先ず上妙の飲食(おんじき)を以て、
其の身を飽足(ほうそく)せしめ、
後に法味を以て畢竟安楽にして、
而も之を建立せしむべし。
第十二の大願は、願わくは我れ、来世に菩提を得ん時、
若し諸の有情、貧しゅうして衣服なく、
蚊虻(もんもう)・寒熱に昼夜逼悩(ひつのう)するも、
若し我が名を聞き、専念に受持せば、
其の好む所の如く、即ち種種の上妙の衣服を得、
亦一切の寶(ほう)荘厳の具・華鬘(けまん)・塗香(ずこう)・鼓楽・衆伎を得、
心の所翫(しょがん)に随って皆満足せしめん。
以上のように、薬師如来は、病を癒すばかりでなく、一切有情のあらゆる苦からの救済を願っておられます。そして、また、一切有情が苦から救済されるばかりでなく、大乗の仏の道を信仰し、薬師如来を念ずることで、悟りを得ることがその『大願』だとしておられます。
(簡単な意訳を避け、原文の読み下し、訓読み、ひらがな文をそのまま記載致しました)
(四谷マルタ)
by tenkidou
| 2009-11-02 13:18
| 薬師如来の瞑想